個人的な学習メモです。
正確性については、ご容赦ください。
反射的利益とは何か?
法律の勉強をしていると、「反射的利益」という少し変わった言葉に出会うことがあります。
一見、物理のような表現ですが、これは法学における重要な概念のひとつです。
反射的利益とは、法律が直接その人を守るために認めているのではなく、制度の実施にともなって間接的に生じる利益のことを指します。
つまり、「自分のために作られたルールじゃないけど、結果的に得してる」ような状態のことです。
どうして「反射的」というのか?
この言葉の由来は、光が鏡に当たって跳ね返るように、法律の制度が誰かに向けられた結果として、その影響が他の人にも及ぶというイメージからきています。
法律の保護は本来、自分に直接向けられていない。でも、その制度の影響が“反射して”自分に届いてくる。そういった間接的な利益のことを「反射的利益」と呼ぶのです。
ちなみに、「反射的利益」という言葉は、英語やドイツ語由来の専門用語のように思えますが、
実は日本の法学の中で生まれた和製用語だそうです。
適当な英訳も、あるにはあるが、一般的に flex- 何とかはないとのこと。
代表例:道路位置指定と通行
反射的利益が問題になる代表的なケースが、道路の位置指定に関するものです。
建築基準法では、建物を建てるためには敷地が「道路に接している」必要があります。
そこで、特定の土地を建築基準法上の道路として扱うために、行政が「この土地を道路として使って良い」と指定する制度があります。
これが「位置指定道路」です。
位置指定された道路を通れるのか?
一見すると、位置指定された私道は「誰でも通れる公道のようなもの」に思えるかもしれません。
しかし、建築基準法の目的は「安全な建築物の配置」のためであり、通行人を守るための制度ではありません。
つまり、通れるようになったのは建築のための制度の“おまけ”として得られた利益であり、通行人に明確な「通る権利」が認められているわけではないのです。
このように、制度の副産物として生じる利益が「反射的利益」です。
私道でも通れる?通れない?
では、その位置指定道路が誰かの私有地だった場合、所有者に「通るな」と言われたとき、通行人はどうすればいいのでしょうか?
実は、法律上の通行権がないため、通行妨害の排除を請求できないのが原則です。
所有者に対して「自分には通る権利がある」と主張することはできないのです。
それでも通れるケースもある?
とはいえ、すべての場合に通れないわけではありません。
たとえば、最高裁平成9年12月18日判決では、その道路の通行が日常生活にとって不可欠なものであれば、通行者は人格権的利益として、妨害の排除を請求できると判断されました。
このように、特別な事情がある場合には、反射的利益を超えて保護されるケースもあるのです。
実務的にどう考えるべきか?
実務上、反射的利益である以上、通行できるかどうかには慎重な判断が必要です。
不動産を購入するときや事業を始めるとき、「この道は位置指定道路だから通れるはず」と思い込むのは危険です。
事前に、明確な通行権があるか、所有者の承諾があるかを確認しておく必要があります。
参考情報・条文・リンク
以下のリンクでは、位置指定道路や通行権に関する詳しい解説があります。
制度の背景や実務への影響を知るうえで役立ちます。
まとめ
「反射的利益」とは、自分のために作られた制度ではないけれど、その制度の結果として得られる間接的な利益のことです。
そして、それは通常、法的に守られた「権利」ではありません。
だからこそ、通行や利用を当然のように思ってしまうと、思わぬトラブルに発展しかねません。
制度の意図と、自分の立場で得られる利益の違いを意識しておくことが、トラブル回避の第一歩となります。

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