平成23年3月23日 最高裁判決:参議院議員定数不均衡訴訟の解説【個人的学習メモ】

行政書士試験合格

こんにちは。トライエクス代表のエヌです。

行政書士試験対策をしていく中での、個人的な学習メモです。

できるだけ引用先リンクを残しますが、解釈その他、正しいとは限らないので、その点はご容赦ください。

平成23年3月23日 最高裁判決:参議院議員定数不均衡訴訟の解説

平成23年3月23日の最高裁判所大法廷判決は、平成22年(2010年)7月11日に実施された参議院議員通常選挙における一票の格差に関する重要な判断を示しました。

この判決では、選挙区間の投票価値の最大較差が5.00倍に達しており、これは憲法が要求する投票価値の平等に反する状態であると認定されました。

しかし、同時に、憲法14条1項等の規定に違反するものではないと判断されました。

引用元: 最高裁判所判例集


判決の背景

当時の参議院議員選挙では、各都道府県ごとに選挙区が設定され、各選挙区の有権者数に大きなばらつきがありました。

その結果、選挙区間で一票の価値に不均衡が生じ、最大で5.00倍の較差が発生しました。

この状況が、憲法が保障する投票価値の平等に反するのではないかと問題視されました。

引用元: 最高裁判所判例集


判決の内容

最高裁判所は、投票価値の平等は憲法上重要な原則であるとしつつ、参議院の選挙制度には「都道府県単位の代表制」という特殊な要素があると指摘しました。

そのため、衆議院と異なり、単純に人口比例だけで選挙区を設計するわけにはいかない事情があるとしました。

しかし、その一方で、今回の投票価値の不均衡は、国会が正当に考慮できる政策的目的や理由と調和的に実現されるべきものであり、単に国会の裁量権の行使における一つの考慮事項にとどまらないと述べました。

つまり、投票価値の不平等を「参議院の性質上、ある程度は許容される」と考えたものの、何の改善もしないことは認められないというスタンスを示しました。

引用元: 最高裁判所判例集


憲法違反とは判断されなかった理由

最高裁は、投票価値の不均衡が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと認めつつも、国会が憲法上要求される合理的期間内に是正を行わなかったとは言えないと判断しました。

そのため、憲法14条1項等の規定には違反しないと結論付け、当該選挙の無効は認められませんでした。

なお、判決の中で、「直ちに投票価値の平等の要請が後退して良いと解すべき理由は見出しがたい」と述べており、これは「投票価値の平等は後回しにできるようなものではなく、重要な原則として維持されるべきである」という趣旨でした。

引用元: 最高裁判所判例集


まとめ

この判決は、投票価値の平等と参議院の代表制の特殊性とのバランスをどのように取るべきかについての司法の立場を示したものです。

具体的には、参議院の選挙制度には都道府県単位の代表制という要素があるため、一票の格差が衆議院よりも大きくなりがちである。

しかし、だからといって投票価値の平等を軽視して良いわけではない。国会が合理的な期間内に是正措置を講じる意図や努力を示していれば、直ちに憲法違反とはならない。

ただし、何も是正しない場合は、将来的に憲法違反と判断される可能性がある。

この判決は、昭和51年4月14日の判決(衆議院議員定数不均衡訴訟)と類似した考え方を示していると言えます。

特に、「合理的期間内に是正が行われない場合に初めて憲法違反となる」というスタンスは、昭和51年判決と同じ枠組みを踏襲しています。

引用元: 最高裁判所判例集

ちなみに:平成23年3月23日判決と昭和51年4月14日判決の類似点

結論から言うと、「平成23年3月23日判決は、昭和51年4月14日判決とよく似た考え方を示した」 ということになります。

どちらの判決も、
「投票価値の平等」は憲法上の重要な原則 であることを認めつつも、
「だからといって、直ちに選挙が違憲とはならない」 という立場を取っています。


両判決の共通点

  1. 投票価値の不平等は、憲法上問題があると認定
    • 昭和51年判決最大4.99倍の格差 を「憲法上問題がある」と指摘。
    • 平成23年判決最大2.304倍の格差 を「投票価値の平等に反する」と判断。
  2. ただし、合理的期間内での是正を考慮
    • 昭和51年判決 → 8年間の放置は「合理的期間を超えた」とし、憲法違反と認定。
    • 平成23年判決国会が合理的期間内に是正措置を検討していたため、憲法違反ではない と判断。
  3. 「投票価値の平等」は軽視すべきでないが、国会の裁量も考慮
    • 昭和51年判決 → 「投票価値の平等は重要だが、国会の政策的裁量もある」
    • 平成23年判決 → 「投票価値の平等を後回しにしていい理由は見出しがたいが、直ちに違憲ではない」

つまり、どういうことか?

平成23年3月23日判決は、昭和51年4月14日判決の考え方を踏襲しつつ、より緩やかに判断したと言える。

✔ 昭和51年判決では、合理的期間を超えた場合に「違憲」とした。
✔ 平成23年判決では、国会の対応を見て「まだ合理的期間内」と判断した。

つまり、
👉 「投票価値の平等は守るべきだが、即違憲とするわけではない」
👉 「合理的期間内に是正されるかどうかを見極める」
👉 「国会の裁量を認めつつ、放置されすぎたら違憲とする」

という判断基準は 昭和51年判決とほぼ同じ で、平成23年判決はその延長線上にある判決 ということになります。


まとめ

平成23年3月23日判決は、昭和51年4月14日判決と考え方がよく似ている。
投票価値の平等を重要視しつつ、国会の裁量を考慮。
合理的期間が超えたら違憲になるが、国会が是正を検討していれば違憲ではない。
結論として、平成23年判決は、昭和51年判決の判断枠組みを踏襲しつつ、より緩やかな判断を下した。


個人的学習メモ

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