こんにちは、エヌです。
行政書士の勉強中のメモです。
専門的な見地から正しいとは限りませんが、疑問に思った部分を整理しています。
「合格革命 行政書士 一問一答式出るとこ千問ノック」 問題 014 と 016 より。
猿払(さるふつ)事件~読みはサルフツ、猿仏じゃないよ
事件の概要
猿払事件は、公務員の政治活動の制限に関する重要な最高裁判例です。
当時の郵便局職員が選挙運動に関与したとして、国家公務員法違反で有罪とされました。
この事件では、公務員の表現の自由(憲法21条)と公務員の政治的中立性確保とのバランスが争点となりました。
判決の詳細
- 最高裁判決日:1974年11月6日(昭和49年)
- 争点:国家公務員法102条1項および人事院規則14-7による公務員の政治活動の禁止が、憲法21条(表現の自由)に違反するか
- 判決内容:
- 公務員の政治的中立性を確保するための制約は合憲と判断。
- 被告の行為(選挙活動への関与)は国家公務員法に違反し、有罪が確定。
- 「公務員の政治活動の制限は、職務の中立性を維持するために必要かつ合理的なものであり、憲法21条に違反しない」とされた。
- ポイントは、禁止の目的/禁止の目的と禁止される政治的行為との関連性/政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益の均衡、の三点。
LRA(Less Restrictive Alternative)の視点
LRAとは、基本的人権を制約する際に、より制約の少ない(Less Restrictive)手段がないかを検討する原則です。
- 猿払事件では、裁判所は公務員の政治活動を広範に禁止することを合憲としました。しかし、より制約の少ない手段(例えば、業務時間外の活動のみを許可するなど)があった可能性があり、LRAの観点からは疑問が残ります。
堀越事件
事件の概要
堀越事件は、国家公務員が選挙期間外に政党機関紙(日本共産党の「しんぶん赤旗」)を購読するよう勧誘した行為が、「政治的行為の禁止」に違反するかが争点となりました。猿払事件と同様に、表現の自由と公務員の中立性のバランスが問題となりました。
判決の詳細
- 最高裁判決日:2012年12月7日(平成24年)
- 争点:
- 国家公務員法102条1項の「政治的行為の禁止」は憲法21条(表現の自由)に違反するか
- 被告の行為(政党機関紙の勧誘)が禁止される政治的行為に該当するか
- 判決内容:
- 最高裁は「本件行為は公務員の政治的中立性を損なうものではない」として、無罪判決を言い渡した。
- 「しんぶん赤旗」の勧誘行為は、私人間の営利活動に近いものであり、公務員の政治的中立性を損なうものではないと判断。
- ポイントは、政治的行為とは、「現実的に起こり得るものとして、実質的に認められるものを指す」
LRA(Less Restrictive Alternative)の視点
- 堀越事件では、裁判所はより制約の少ない手段を考慮し、公務員の政治活動を一律に禁止するのではなく、活動の性質に応じた判断を行いました。この点で、LRAの観点からより合理的な判決といえます。
両事件の比較
| 項目 | 猿払事件 | 堀越事件 |
|---|---|---|
| 判決日 | 1974年11月6日 | 2012年12月7日 |
| 争点 | 国家公務員の選挙活動 | 国家公務員の機関紙勧誘 |
| 対象行為 | 選挙運動への関与 | 政党機関紙の購読勧誘 |
| 判決 | 有罪(政治的中立性維持のため) | 無罪(表現の自由の一環) |
| 憲法21条(表現の自由)との関係 | 制約は合憲 | 制約は違憲の可能性あり |
| LRAの観点 | もっと制約の少ない手段があった可能性あり | より制約の少ない手段が採用された |
まとめ
- 猿払事件 では、公務員の政治活動を広範に禁止する厳格な判決が下されたが、 堀越事件 では、より制約の少ない手段を考慮し、公務員の表現の自由を広く認める方向にシフトしている。
- 憲法21条(表現の自由)と公務員の中立性のバランス に関する解釈は、時代とともに変化しており、LRAの観点からも猿払事件より堀越事件の判断の方が合理的といえる。
- 時代背景の違い(1970年代の高度経済成長期と、2010年代の民主主義成熟期)も判決の違いに影響を与えている。

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