2025年という年は、私にとって「二兎を追う」一年でした。
行政書士試験と宅建士試験。
この二つの国家資格に対し、私はあえて同時期にアプローチを試みました。
一般的に、働きながらの「ダブル受験」は推奨されないことが多いですよね。
リソースが分散し、共倒れになるリスクが高いからです。
しかし、結果としてこの選択は正解だったと、今の私は感じています。
それは単に「二つの資格を取ったから(ダブルライセンス)」という結果論ではありません。
二つの試験を、テレビゲームのRPGにおける「メインクエスト」と「サブクエスト」に見立てて構造化したことで、学習の質そのものが変容したからです。
当時の私の思考プロセスと、そこから得られた学習戦略について、自戒を込めて記録しておきたいと思います。
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メインクエストとサブクエストという構造化と心理
RPG(ロールプレイングゲーム)には、物語の主軸となる「メインクエスト」と、寄り道だが報酬が得られる「サブクエスト」が存在します。
たとえば、ドラゴンクエストだと、クリアに必須のアイテムではないけれど、強い武器や防具を入手するための「ちょっとした試練(中ボス討伐)」などです。
メインクエストだけを進めればゲームは最短でクリアできます。
しかし、それではレベルや武器、防具が足りず、最終ボス戦で詰まることもあります。
また、ストーリーが一直線で、飽きがくる、かも知れません。
一方で、サブクエストばかりにうつつを抜かせば、いつまで経っても物語は進みません。
資格試験の学習においても、このバランス感覚が極めて重要だと気づきました。
精神的閉塞感を打破する「逃げ道」としてのサブクエスト
一つの難関資格(メインクエスト)だけに一点集中していると、どうしても煮詰まる瞬間が訪れます。
特に直前期のプレッシャーは凄まじいものです。
「もし今年落ちたら、この一年がすべて無駄になるのではないか」
「来年も受けるなんて、もう、めんどうせー(笑)」
という恐怖。
これは学習効率を著しく低下させます。
そこに「サブクエスト」が存在することで、精神的な逃げ道が生まれるのです。
「今日はメインの行政法が辛いから、サブの宅建業法で気分転換しよう」
このように、学習対象をスイッチすることで、脳の疲れを分散させることができます。
重要なのは、どちらも「法律の学習」であるため、逃げているようでいて、実は経験値を稼ぎ続けているという点です。
相互作用による知識の立体化|宅建士と行政書士は重なりが多い
行政書士試験と宅建士試験は、試験範囲が一部重複しています。それが「民法」です。
行政書士の民法は、総則や債権を中心に理論的な深さを問われることが多い。
対して宅建の民法(権利関係)は、借地借家法など、より実務的で具体的な運用も問われます。
同じ「民法」という山を、違う登山口から登る感覚に近いかもしれません。
たとえば、個人的な感想ですが、宅建ではメイン論点の「都市計画」関連の実務に近いゾーンは、行政書士試験では深追いしにくい、ややこしい範囲と感じていました。
それが、宅建の学習を始めて、ようやくイメージがつかめるようになってきた。
そんなこんなで、メインクエストで行き詰まった概念が、サブクエストの具体的な事例問題を通じて「ああ、そういうことか」と腑に落ちる。
この相乗効果こそが、並行学習の最大の果実だったと感じています。
挑戦の可否を決める「撤退ライン」と「進軍ライン」
もちろん、無計画な並行学習はただの蛮勇に過ぎません。
私が2025年にこの戦略を実行に移した背景には、明確な勝算、あるいは「トリガー」が存在しました。
それは、メインクエストである行政書士試験の進捗状況です。
6月の(自分)模試で「150点くらい」取れた意味
私が宅建士試験へのエントリー(=サブクエストの受注)を決めたのは、6月頃のことでした。
宅建の願書受付は例年7月ですから、その少し前です。
判断材料としたのは、LEC の市販模試(書籍)の結果です。
3回分+αが収録されているのですが、ここで私は、300点満点中150点程度を1回、取ることができました。
記述は採点基準が「わけわからん」ので、とりあえず、無視(ゼロと仮定)して……。
合格ラインである180点には30点も足りません。
もちろん、択一(短答)だけで180点、というのがベストなのはわかっていたんですよ。
しかし、初学者が6月の時点で150点をマークできた事実は重い意味を持ちました。
これは「基礎知識のインプットが一通り完了し、アウトプットの作法も身につき始めている」ことを示唆しているからです。
残りの30点は、直前期の詰め込みと記述式対策で十分に埋められる射程圏内だ、と(少なくともそのときは)思えたのです。
結果は190点での合格。
それほど高得点は取れませんでしたが、なんとか勝ち切りました。

自分の進み具合に「納得」してから次へ進む
もし、この時点で100点前後、あるいはそれ以下であれば、私は宅建に見向きもしなかったでしょう。
基礎がぐらついている状態で上に建物を増築すれば、崩壊するのは目に見えています。
行政書士試験の準備が「ある程度」進んだ。
この主観的な納得感と、模試の点数という客観的な裏付け。
この二つが揃ったタイミングこそが、サブクエストを受注すべき唯一の好機だったのだと、振り返って思います。
リソース管理の鉄則:メインクエストの「聖域」を守る
サブクエストを始めると、どうしても新しい知識が新鮮で楽しくなり、そちらに時間を割きたくなります。
人間は本能的に「新しい刺激」を求める生き物ですからね。
しかし、ここで主客転倒しては、元も子もありません。
私が2025年の後半戦で自らに課したルールは、シンプルかつ絶対的なものでした。
行政法は「1日たりとも」欠かさない
行政書士試験の合否を分けるのは、配点の高い「行政法」であることは間違いありません。
宅建の試験日が近づき、宅建業法の暗記に追われる日々であっても、必ず「行政法」の学習時間を確保しました。
肢別数問でも構わないから、とにかく切らさない。
1日数問の過去問演習であったり、条文の素読であったりと、時間はまちまちです。
しかし、「行政法に触れない日」は作りませんでした。
語学の学習と同様、法律の思考回路も使わなければすぐに錆びつきます。
特に、独特の言い回しが多い(手続き関係などの)行政法は、感覚を鈍らせないことが何より重要です。
優先順位の可視化:行政書士なら行政法、宅建なら業法
自分の中で、あくまで本命は行政書士(メインクエスト)であり、宅建(サブクエスト)は余力でこなすもの、というヒエラルキーを崩しませんでした。
もともと、役職定年時の選択肢を増やしておこう、というのが動機でしたから、宅建士ではちょっと心もとない。
そもそも、50歳を越えてなお、不動産関係の仕事は一切したことがないのですから。
とにかく、「宅建の勉強をするために、行政書の勉強時間を削る」のではなく、「行政書の勉強が終わった後の余剰時間で、宅建を攻略する」。
このスタンスを維持できたことが、結果的に双方の合格を手繰り寄せた要因だと分析しています。
2026年以降の展望:この戦略の汎用性について
2025年のこの経験は、単なる「資格取得の思い出」に留まりません。
現在、予備試験というさらなる高みを目指していますが、似たような境遇の方であれば、この「RPG的学習戦略」はそこでも応用可能だと考えています。
行政書士を「サブクエスト」にするという視点
もし、予備試験や司法書士試験を現在の「メインクエスト」としているなら、行政書士試験を「サブクエスト」として配置するのは極めて有効な戦略ではないでしょうか。
私はもう行政書士を使ってしまったので、「短答合格」をサブクエスト、「論文合格」をメインクエストと考えるようにしています。
(とはいえ、論文合格は相当に高いハードルであることは、入門講義を少し終えたあたりで、すでに思い知らされています。なんじゃこれ、という SASUKE のような難易度でね……)
予備試験や司法書士試験の学習者は、すでに憲法・民法・商法(会社法)について、行政書士試験合格レベル、あるいはそれ以上の知識を有しています。
彼らにとって行政書士試験のハードルは、一般の受験生よりも遥かに低いはず。
なにごとも、「気の持ちよう」という部分はあるわけで。
実際、司法試験、予備試験対策では最大手の伊藤塾でも、行政書士試験を試しに受けてみることを勧めており、司法試験受験生向けの行政書士試験対策講座もあると聞きます。
「成功体験」という報酬を得るために
長期間にわたる難関資格の学習は、終わりの見えないマラソンのようなものです。
何年も「合格」という果実を味わえないまま走り続けるのは、精神衛生上、よろしくありません。
そこで、中間目標として行政書士試験を配置する。
「自分は法的に認められた資格を持っている」という事実は、自己肯定感を支える強力な武器になります。
RPGで言えば、ラスボス(予備試験)に挑む前に、中ボスを倒して強力な装備(行政書士資格)を手に入れるようなものです。
もちろん、そんな時間は惜しい、という人は、メインクエスト一本で頑張ってください。
所詮は、個人的な N=1の意見でしかないですから。
そういう考え方もありますよ、というだけです。
資格試験に限らず、戦略的な「寄り道」のすすめ
ここまでの内容をまとめておきます。
振り返れば、2025年の私は、二つの試験を並行することで、常に「どちらかの勉強」をしていました。
行政書士の勉強に疲れたら宅建をやり、宅建の勉強に飽きたら行政書士に戻る。
結果として、総学習時間は単独受験の場合よりも増えていたはずです。
「二兎を追う」リスクを恐れず、しかし「どちらが本命の兎か」を見失わず、冷静に距離を詰める。
そのプロセスは、ゲームの攻略そのものでした。
これから新たな資格、あるいは複数の目標に挑もうとしている過去の自分のような方に、一つだけアドバイスを送るとすれば、こうなります。
まずはメインクエストを盤石(にできる、と思える程度)に進めてください。
その上で、余裕があるならサブクエストを楽しみましょう。
ただし、メインの剣(行政書士なら、行政法)だけは、毎日研ぎ続けてください。
それが、私が2025年の戦いから持ち帰った、最も確かな教訓です。

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